施設概要・沿革

『元木竹林堂』は天保元年から180年続く表具店。
襖の張り替えから掛け軸など古書画の修復、補筆をしている。
今回はそんな元木竹林堂で修行中の元木亨さんにお話を伺った。
表具師の高齢化が進んでおり、修行を始めるのが40代と言われている。
そんな中で、20代という若さの元木さん。
年齢を武器にした独自の視点から若い世代の人にも表具の良さが伝わるような商品を開発しているそう。
元木さんが表具に込める思いやこだわりとはどのようなものなのだろうか。
名工のワザ

表具師の仕事は障子張りから掛け軸、襖、屏風、衝立の修理や修復と非常に幅が広い。
もちろんミリメートルの単位の差異すら無い。
さらに仕事をこなせるようになるまで実に15年以上を要する。
そのうえ、作品をどのように活かすか判断をする感性もなくてはならない。
修行のため、他の表具店に修行に行くこともあるという。
ただし、元木竹林堂は他の表具店と一線を画するところがある。
それは、180年のあいだ受け継がれてきた「人手」による作業を貫いている、というところだ。
新しいものに流されない元木竹林堂のこだわりが伝わってくる。
一方で元木竹林堂は伝統だけにしがみ付いていない。
若い人にも表具を身近に感じてもらうため、掛け軸の表装に用いる裂という生地を使ったヘアゴムを『Is』という会社を立ち上げ販売している。
そのヘアゴムの作りからは目で見て美しいモノを届けたいという元木さんの感性が伺える。
徳島駅のお土産屋や居酒屋など様々なところで購入することができる。
元木さんは若い人がヘアゴムを手に取り表具について興味を持ってもらえたら、と熱っぽく語っていた。
代表、担当者の思いや考え

自転車の練習をする隣で父が掛け軸の修理をしていたのを見ていたほど幼い頃から掛け軸と身近に触れ合ってきた元木さん。
家業を継ぐことに対して嫌だと思ったことはないそうだ。
「自分は長男だから、継ぐことが運命だと思っていた」と話す。
しかし、20代、修行を始めて1年目という若さのため、まだ仕事を手伝わせてもらえないという。
そんななか始めたのがヘアゴムの製作だ。
その製作から販売まで始めて1年以内で軌道にのせており、その展開の速さに驚いた。
社長である父に製作を始めてもよいかの許可をとる前から既に製作を始めていたそうだ。
生地は裂の切れ端を使う。これも、まだ仕事を手伝うことができないゆえだろう。
机一面に並べられたヘアゴム。
余った表具の切れ端を使うため同じ柄で大量に作ることができず、同じ柄のヘアゴムは数える程しかない。
そのうえどれも一つ一つ手作りであるためその数個のヘアゴムも微妙に柄の位置が違っており、そういう意味でも世界に1つの作品だ。
並べられたヘアゴムを見て好きな柄を見つけるのが楽しく、引きずり込まれた。
手の平よりも小さいサイズの掛け軸の生地にこんなにも魅力を感じるのだから、本物の大きな掛け軸を目にした時の衝撃は桁違いだった。
「手に取ってそこから興味を持ってほしい。」
そう元木さんは言う。
まとめ

表具師というどこか遠い世界のような職業を身近に感じさせてくれるIsの取り組みは、今後若い人に向けて益々広がっていくだろう。
全て手作業であるが故の継承の難しさからも、元木竹林堂という場所は決して失われてはならない場所である。
まだまだこれからという元木亨さんの今後のご活躍も楽しみにしながら、徳島に残る名工の技術を私たちも広げていきたい。
感想

元木竹林堂は機械を使わない、という思い入れに大変驚きました。
全てを手作業で仕事ができるというのは、職人の持つ実力に裏付けられたこだわり。
正しい技術を次の世代へ伝えていこうとする元木竹林堂の思いには心が揺さぶられるものがありました。
そして若い世代に向けられた表具のヘアゴムや、身近なモノを通して表具に興味を持ってもらいたいという元木さんの並々ならぬ想いは強く印象に残っています。
これからも、これまでのように表具師の仕事はなくてはならないものとなるでしょう。